財務諸表から「潰れない大学」を見極める
各大学は、財務情報をホームページ上で公開しているわけですが、
(過去記事参照。)
www.bank2university.comしかし、なにをどう見ていいのかわからないのも事実。
そこで、まず「その大学が潰れないか」にポイントを絞って、
見ておきたい箇所を簡単に列挙していきます。
見ておきたい3つのポイント
事業活動収支計算書の「教育活動収支差額」「経常収支差額」が赤字でないか
その学校が「儲かっているのか」を見ます。
「教育活動収支差額」は、本業である教育活動で儲かっているか、
「経常収支差額」は、本業+本業以外で総合的に儲かっているかを表します。
両方とも、プラスだと黒字、マイナスだと赤字です。
赤字が大きい、何年か分を見たときに赤字が連続している、
といった場合は注意が必要です。
学校法人は儲け幅を大きくし過ぎると、
補助金が減額されてしまうなどのデメリットがあるため、
収支トントン~若干黒字辺りを狙うのが通常です。
それゆえに、
「大幅な赤字 or 連続した赤字でないかどうか」
がポイントとなるわけですね。
貸借対照表の「純資産の部合計÷資産の部合計×100」が90%前後か
一般の企業では自己資本比率と呼ばれる比率です。
法人が持っている資産のうち、何%が自前の資産かを示します。
この数値が高いほど、法人として体力があり、
経営が安定していると言えます。
学校法人の全国平均は90%弱と言われていますので、
90%以上あれば安心できます。
貸借対照表の「現預金」は充分にあるか
貸借対照表の「資産の部」の下の方に「流動資産」という項目があり、
その一番上にくる「現預金」。
まさに「おカネ」をいくら持っているかが示されています。
当然、多ければ多いほど良いです。
学校法人同士で比較する場合は、
「資産の部」に占める現預金の割合を比較するとよいでしょう。
規模に対して、どの程度おカネを持っているかがわかります。
実は現預金は、銀行員が企業に融資する際、
決算書の中でかなり重視する項目であったりします。
現金は最強の資産です。
財務諸表から「潰れない大学」を見る基本的なポイントは
以上の3点です。
経営が健全な学校法人の見分け方
大学を運営している学校法人は
増えに増えて今や700以上あるわけですが、
(過去記事参照。)
その中から、自分の職場を選ぶ場合、
どのような観点で見ていくか?
パッと思いつくところでいけば、
評判をネットで検索したり、
キャンパスを見学してみたり、
卒業生に評判を聞いてみたり、
2chで情報を見てみたり…といったところでしょうか。
どれも大事なことですが、
どれも主観が入ります。
大学職員の評判は結構見つかりますし、
ブログも割とありますけど、
個別の具体的な学校法人名を挙げての客観的な情報って
なかなか見つからないんですよねぇ。
(ただし、登録制のクチコミサイトは見てみると具体的な情報が取れます。
それはそれでまた記事にします。)
(追記。記事にしました↓)
経営状態を見る最強のツール
最も客観的に、
しかも個別の学校法人の経営状態を見ることができる
最強のツールって、なーんだ。
しかもネットで見れて、無料。タダ。
それは、財務諸表です。
財務諸表ってなんだ。
財務諸表(ざいむしょひょう、financial statements)は、
企業が利害関係者に対して一定期間の経営成績や財務状態等を
明らかにするために複式簿記に基づき作成される書類である。
一般的には決算書と呼ばれることが多い。
Wikipediaより
要は、その学校法人が
「儲かっているのか」
「人件費をどのくらい払っているのか」
「どのくらい資産を持っているか、どのくらい借金があるか」
等が財務諸表を見ればわかります。それも数字で。
特に、大学の7割を占める私立大学では、
私学法という法律によって、
情報を開示することが求められています。
国公立も含め、ほとんどの学校法人は
ホームページ上で最新の財務情報を公開しているのです。
「●●大学 財務」
で検索すれば、だいたい出てきますので、
れっつ検索。
逆に、公開していない学校があるとすれば、
公開できない内容か、
公開する体制を整えられていないかだと考えられます。
部屋が片付いていないから
友達を家にあげられない的な。
(あるある。)
財務諸表を読んだ結果。
僕は銀行員だったこともあり、
サラッと公開されている財務諸表等を読み解き、
ホワイトっぽい学校法人を見抜きつつ、
ブラックっぽい法人は避けつつ、
面接では財務情報を分析したことをアピりつつ、
(これ意外と重要。)
内定をゲットしました。
財務諸表が読めない方も、
単に取っつきにくいだけで、
内容自体はたいして難しくありません。
詳しくは次の記事で。
大学増えすぎ問題。
大学職員になる=1つの大学に就職する
今、日本に大学がどのくらいあるか知ってますか?
「大学職員になる」
イコール
「どこか一つの大学を選んで就職する」
わけですので、その大学がどの程度あるのかということは、
大前提として知っておく必要があります。
そもそも「大学」とは。
大学(だいがく、英: college、university)は、
学術研究および教育における高等教育機関である。
日本の現在の学校教育制度では、高等学校もしくは中等教育学校卒業者、通常の課程による12年の特別教育を修了した者、またはこれと同等以上の学力を有する者を対象に専門的な高等教育を行うものとされている。
Wikipedia より
大学には大きく分けて3つ
国立・公立(都道府県立や、市立等)・私立
があります。
そして、近年大学の数は以下のように変化しています。
1955年……228校(国立:72 公立:34 私立:122)
1980年……446校(国立:93 公立:34 私立:319)
2000年……649校(国立:99 公立:72 私立:478)
2010年……778校(国立:86 公立:95 私立:597)
2015年……779校(国立:86 公立:89 私立:604)
文部科学省「文部科学統計要覧」より
1955年と2015年を比べると、
大学数は3倍以上に増えていることがわかります。
特に日本の大学は、今や77.5%が私立大学。
数も604校と、これはもうアレです。
大学、増えすぎ。
少子化の時代。
大学の1番のお客さんは、何といっても
「18歳の受験生」
です。
そこで今問題となっているのが
「2018年問題」。
日本の18歳人口は、
戦後2度目のピークである1992年の205万人から減少が続いており、
2008年以降は120万人前後で安定期に入っていました。
それが2018年以降、再び減少し始め、
2031年にはついに100万人を下回ると見られているのです。
…にも関わらず、大学進学率はここのところずっと横ばい。
つまり、単純に言うと
お客さん→減っていく
お店→増えている
という、ヤバイ状況なのです。
(内閣府作成資料、pdfで開きます)
少子化とは言えど…
しかし、日本全体を見渡した場合、
今後の外部環境が良い業界なんて、
めったにありません。
今まで、大学の外部環境が良すぎたため、
ここまで増え続けたとも言えます。
業界は厳しい環境に突入しますが、
悲観しすぎることなく、
数多ある大学の中から健全な経営をしている
学校法人を見抜くことが、
転職においては非常~に重要なのです。
その見抜き方は、またの機会に。