そうだ、大学職員になろう 〜元銀行員が語る転職とかの話〜

銀行員から大学職員へ、サラッと転職した人のブログ。大学職員専用の転職ノウハウをつらつらと。

経営破綻を予防するための指標

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大学の財政状況を(割と簡単に)分類する方法が

日本私立学校振興・共済事業団から提供されているのです、という話。

 

大学選び(=就職先選び)には、

財務諸表を活用するといいという記事を以前書きましたが、

 

bank2university.hatenablog.com

 

 

 

その学校法人の公表している財務内容を見つつ、

Yes or Noのフローチャートをたどれば、

正常状態からレッドゾーンまで

判定ができるというものが、存在するんです。

 

コイツが結構有能だと個人的には思っていまして。

客観的に財務判断ができて、

しかも結果がイメージしやすいというか。

レッドゾーンとか、いかにもヤバそうだし。。。)

 

それが こちらのページで公開されています。

 

 

こんな具合で。

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定量的な経営判断指標に基づく経営状態の区分(法人全体)」(pdfで開きます)

 

 

 

経営判断指標

 

経営判断指標とは

「経営破綻を予防するための指標」である。

 

特徴

1.教育研究活動にかかるキャッシュフローの状況により判定

2.外部負債、運用資産の状況を加味して経営継続(可能)年数を算出

3.定量的な絶対評価である

4.法人の個別事情に応じた修正が必要な場合も多々ある

 

学校法人会計基準改正に対応した新たな財務比率等についてより

(pdfで開きます)

 

…ということで。

平たくいうとですね。

 

このフローチャートを使って、

学校の本業である「教育」に関して、

「おカネが底をつかないように運営できているか」

をランク付けします、と。

つまりはこういうことです。

 

 

フローチャートの質問事項

 

1.教育研究活動資金収支差額で2年連続の赤字があるか

2.外部負債と運用資産を比較して外部負債が超過しているか

3.外部負債を約定年数又は10年以内に返済できるか

4.修正前受金保有率が100%を切っていないか

5.経常収支差額が2年連続して赤字であるか

6.黒字幅は10%未満か

7.積立率が100%未満か

 

このチャート上で特に大事なのは1、3、4、5。

これらをクリアしていれば「正常状態」、

1つでもクリアしていなければイエローゾーン以下の可能性ありです。

 

 

教育研究活動資金収支差額で2年連続の赤字があるか

 

チャートの1番目にくる設問ですが、

ここでYesがついた瞬間、

正常状態(A1~A3)になることが不可能になるという

何とも無慈悲なつくり。

 

しかしこれは当然のことで、

 

「教育研究活動資金収支差額が赤字」

イコール

「教育関係で入ってくるおカネ(授業料、入学金、補助金etc)よりも、

教育にかかる費用(教職員の人件費、教材費、消耗品費etc)の方が多いですよ状態」

 

しかもそれが2年連続していますという。

 

これ教育機関としてどうなんでしょ?

…ということが1の設問で問われているワケです。

 

※「教育研究活動資金収支差額」は、

「活動区分資金収支計算書」という書類に出ています。

 

外部負債を約定年数又は10年以内に返済できるか

 

これは1が黒字だった場合、その黒字の金額で

保有している借金をどのくらい返していけるかという設問。

 

計算式は明示されていませんが、

過去3期平均の教育研究活動資金収支差額の10倍以上借金があれば、

Noとみていいのではないでしょうか。

約定年数が10年以上ある場合もあるので一概には言えませんけども、

目安として。

 

※借金=借入金+学校債+未払金+手形債務(支払手形)

 これらは「貸借対照表」に載っています。

 

 

修正前受金保有率が100%を切っていないか

 

計算式は

運用資産÷前受金です。

 

前受金とは、

「来年度以降で使うために前もって受け取っているおカネ」

のこと。

入学金や授業料を3月に受け取って、4月以降に使っていくようなイメージです。

 

運用資産とは、

現預金+特定資産+有価証券

のこと。

「持っているおカネ or すぐに現金化して使えるもの」的なイメージ。

 

前受金は年度末時点では当然全額未使用であるハズなので、

少なくとも修正前前受金保有率は100%以上になりますが、

これが100%を切るとなると、

「手元のおカネが無さすぎて、

来年度に使うべきおカネを先食いしている」

という結構しんどい状況。

 

※現預金、特定資産、有価証券、前受金は「貸借対照表」に載っています。

 

 

経常収支差額が2年連続して赤字であるか

 

経常収支差額は一般企業でいう経常利益のようなもの。

これが赤字ということは、

法人としてトータルで儲かっていないということです。

 

※経常収支差額は「事業活動収支計算書」に載っています。

 

 

大学は「正常状態」に近づく努力をしている

 

上に取り上げた5項目が、全て良い方向に転んで初めて、

「正常状態」に区分されます。

 

直近の状態が「正常状態」である大学を狙った方がいいことは言うまでもありません。

 

イエローゾーン以下の大学に勤めたいという場合は、

フローチャートの質問事項のどの部分をクリアすれば正常状態となるのかを確認し、

面接の逆質問のネタにすると、

一歩抜け出せるのではないかと。

 

(「◯◯の点を改善するための取組を教えてください」という感じで)

 

 

さーてみなさんも気になる学校法人の財務諸表を当てはめて、

フローチャートを有効活用しましょー。